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森の中の生態系と鳥
よく学校の教科書の中にも、食物連鎖という言葉が使われています。日本の森には一部の動物の仲間を除いて、大型肉食動物は生息していません。そのため日本では、鳥の仲間が生態系の頂点、即ち食物連鎖の最上位に位置しているのが現状です。 ここでは、鳥が関係する食物連鎖を具体的に説明する際によく使われる話をひとつ紹介します。 森の生態系の上位に位置する野鳥の仲間ですが、その野鳥の中でも上位に位置するものとしてワシタカ科の仲間があります。その中から森の中に生息するものの代表としてハイタカを例に挙げてみることにします。ハイタカは、ハトくらいの大きさの小型のタカです。森の中で木々の間を巧みに飛びまわり、主に小鳥の仲間を補食して生きています。 そのハイタカ1羽が1年間に餌として必要とする小鳥の数は約200羽と言われています。ただ、小鳥の方も逃げのびて繁殖しなければなりませんし、他のリスクも考えられます。それらのリスクも考慮すると、ハイタカが住む森には約1000羽の小鳥が生息している必要があります。 さて、この小鳥たちを支えているのが虫たちです。1羽の小鳥が1年間に餌として必要とする虫の数は、アメリカのある研究者によると9万匹〜14万匹だということです。ここでは少ない方の9万匹という数字を使うことにします。この9万匹という数字を使うと、ハイタカ1羽が1年間生きていくために必要な虫の数が、次のように推定されます。 [小鳥・1000羽]×[虫・9万匹]=9千万匹 この虫たちを支える植物や土の中の微生物の数となると、途方ない数字になることは明らかです。ハイタカが1羽住むことのできる森には、これだけの生き物がいなければならないのです。 豊かな森の条件 このように森の中の生き物は、そこの生態系を構成するものとして互いに密接な関係があり、絶妙なバランスの上で生きています。その歯車のひとつでも狂ってくると、すぐに他の生き物が影響を受けてしまい、森の生態系そのものがおかしくなってしまいます。森にとっては、そこのどんな生き物でも大切な役割を担っています。そんな森の生態系の上位に位置する野鳥たちのことを知ることは、そこの森がどれくらい豊かな自然をもつ森かを判断するひとつの材料になるのです。 |
| キツツキの話 「キツツキというのはどんな鳥ですか?」 と聞かれることがあるが、実際にはキツツキという名前の鳥はいないので返答に困ってしまう。キツツキというのはキツツキ科の鳥の総称で、四国にはコゲラ、アオゲラ、オオアカゲラなどが生息している。 ブナ帯の森に入って木を観察していると、幹のまんなかに開いた直径5cm〜10cmの穴をよく見かける。これはキツツキ類が営巣するために開けた穴なのだ。古くなった穴は、ムササビやヤマネが使っていることもある。 いつだったか、とある原生林の中でうずくまって撮影をしていたら、突然すぐ後ろの方で「ダララララ…」というキツツキのドラミングが聞こえてきた。ドラミングというのは、キツツキがくちばしで激しく木の幹を連打する行為で、繁殖期にはよく耳にすることができる。ゆっくりと振り返るとオオアカゲラである。距離は約20メートルぐらいだろうか。彼はこちらにはまったく気づいた様子もなく、いや、気づいていたのかもしれないが、とにかくすごい勢いで幹をたたいている。しばらく観察することにした。大きさは30cmぐらい、頭の上の赤いベレー帽は雄鳥のしるしだ。くるくると螺旋状に回りながら木の幹を器用に上ってゆく。よく落ちないものだと感心したが、どうやら尾羽でからだをささえているようだ。また、ドラミングを始めた。すごいすごい!猛烈な速さだ。あっけにとられて見ていたが、ふお重大なことに気がついた。「なぜあいつはノウシントウをおこさないんだ?どうしてムチウチにならないんだ?」あれだけ激しく頭を振っていれば脳障害をおこしても不思議ではない。しばらく考えてみたが、答えが出てくるはずもない。きっと彼の首には強化サスペンションが装備されていて、脳みそには高性能ショックアブソーバーがついているに違いない。そう思うことに決めてまた森の撮影にもどった。 |
| 西村 公志(日本野鳥の会高知支部長) |