豊かに育った木々が鬱蒼として濃い影を落とし、山すそから流れてくる森の香が四万十川を吹きわたる。

 ここは高岡郡四万十町(旧幡多郡十和村)。四万十川に架かる沈下橋のたもとに木工品の工房、アリス工芸がある。工房のあるじは、矢島博さん。地元四万十のヒノキやスギを使った積み木やドミノ、キーホルダーなどの小物、木製プランターなどをつくりながら、猫の“ミーコ”と悠々自適に暮らしている。

 「自然が豊かでとにかく静か。ここの環境は最高です」と満足げな矢島さんだが、町の総面積の9割近くを森林が占める四万十町に移り住んだのは1995年。もともと兵庫県尼崎市で工房を開いていたが、阪神大震災で自宅兼工房が半壊したことから移住を決意した。旅行が趣味の矢島さんが、日本各地を回ったなかで四万十川を訪れた時のことがとても良い印象として残っていたことや、もともと田舎暮らしに憧れていたことから、縁もゆかりもない四万十町に移住先を決めたそうだ。木工品づくりのかたわら、趣味の釣りを思い切り楽しんでいるというから、うらやましい限りだ。

 また木工品づくりのほか、気さくな矢島さんが近所の人からよく頼まれるのは工芸教室の開催。地元のみならず、県外へも出前授業に行うこともあるという。ヒノキ(桧)やスギ(杉)の板でつくる表札や、板にカラフルな色の小石をボンドでくっつける工作など、まったくの素人でも楽しめる授業に根強い人気がある。子供のみならず、同伴する親も夢中になるそうだ。

 間伐材を積極的に使って商品づくりをする矢島さん。新商品の「ボトル乾燥スタンド」も間伐材でつくったユニークな商品だ。洗ったビンやコップを並んだ棒の部分に逆さに入れて乾かす。単純な仕組みだが、矢島さんが試作品を実際に使ってみて意外と便利だったので商品化したという。今後は高齢者向けの手すりや、リハビリ用の打楽器の製作なども考えているそうだ。

 矢島さんに仕事の面白さについて聞くと、「自然の中にあるものに素朴なデザインを加えて、頭の中に描いた仕上がりイメージを実現できたときの面白さと、つくった商品が多くの人に喜ばれることですね」との返事が返ってきた。

 矢島さんがつくる商品は工房以外でも四万十町大正や松野町(愛媛県)にある道の駅、四万十市にある「カヌー館」や「かわらっこ」などで販売されている。素朴な商品を手に取ると、子供の頃に工作をしたり木を削ったりして遊んだ楽しい記憶を呼び覚ます人も多いだろう。


代表の矢島博さん

箱クルマと積み木パーツ

ボトル乾燥スタンド

ひのき工作セット
アリス工芸
高岡郡四万十町茅吹手79
TEL
 0880-28-5599
FAX 0880-28-5599
 
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