「長く使ってもらうために良いものをつくりたい。5年後10年後によかったと言ってもらえれば」と語る土居建具製作所代表者の土居忠さん。
さて、こだわりの食卓用の椅子を消費者の目で厳しくチェックしてみると・・・。
見た目は特に変わったところのない椅子だが、座ってみると心地よく体にフィットする。クッションを敷いていない木製の椅子は長く座りにくいものだが、買った客から「長時間座っても疲れない」との言葉を頂くこともしばしばあるという。それもそのはず、座(尻が接する部分)の微妙なラインを見つけるだけでも5年を要しているのである。丹精込めてつくられた椅子の1つひとつが、長年の試行錯誤の上に成り立っているのだ。
社名通りもともとは建具の製造販売会社だが、家具づくりに興味を持っていた土居さんは椅子の製作を以前から行っていた。そして2005年2月に高知新聞夕刊で土居建具製作所の椅子が紹介されたことで、リラックス・コア株式会社(高知市)から一風変わった椅子づくりの依頼を受けた。そして座りながら運動もできるマッサージ椅子「ロハスチェア CoRon」(税込10万円〜、特許取得済)を開発。製造を土居建具製作所が行い、リラックス・コア(株)が販売元となっている。
この椅子に座りながら突起物の付いたペダルを踏むと足ツボを刺激し、さらにペダルに連動して動く背中の指圧球が腰や背中を刺激してくれる。足腰が弱って歩けなくなった老人が、この椅子を愛用することで歩けるようになるなど、リハビリ効果があることも報告されているそうだ。
土居さんはまた、開発に際して高校生の意見も積極的に採り入れている。県立大方高校の生徒が「町をプロデュース」と題した授業の一環として、高知大学や黒潮町と協力しながら「ホエールウオッチング客の減少阻止」や「黒砂糖を使ったオリジナル商品の開発」など15のミッションに挑んでいる。「土居建具製作所のブランド化」はそのうちのひとつで、5名の生徒との関係は2年目(2005年開始)を迎えた。
「自分みたいなおんちゃんが考えるより、若い人に考えてもらった方が斬新なアイデアが生まれるかもしれない」という朴訥な人柄の土居さんの言葉から、良いものは何でも採り入れようという職人としての貪欲な姿勢を垣間見ることができる。
「とにかく信用が第一」と、社員がつくる商品すべてを厳しくチェックする土居さん。しかし、これまでに世に出した商品の中で満足したものはひとつもない、と語る。その言葉の背景には、現状に満足したら終わりという強い信念があるのだ。そのためいつも仕事のことが頭から離れず、次なる商品の開発に余念がない。
建具職人がつくったこだわりの椅子。一度座ると、誰もが違いに気づき、もはや手放せなくなるに違いない。