バッグを木でつくるという発想は、いかにも奇抜かもしれない。しかしこのバッグ、「奇を衒(てら)った商品にいいものはない」という常識を完全に覆したといっていいだろう。
形が和菓子の「もなか」に似ていることから「MONACCA(モナッカ)」と命名された木製バッグ。軽く押すと柔らかく、少し撓(しな)る。おまけに水に浮くほど軽量。手に取るとスギ(杉)の匂いがほのかに香り、自然と心が安らぐ。
この商品の製造・販売を手がける「株式会社エコアス馬路村」は平成12年に誕生した。社名の由来は「明日(アス)はきっとエコロジー、いつか生態系循環の永遠の森につながるように」というポリシーから。「MONACCA」シリーズのほか名産の魚梁瀬(やなせ)杉を使ったさまざまな製品を扱っている。
同社はもともと間伐材を原料としたトレーや皿を専門に製造・販売していたが、高知県出身のインダストリアルデザイナー・島村卓実さん(東京都在住)との出会いによりこのバッグは誕生した。吉祥寺(東京都)にある高知県産品を扱うアンテナショップで木をプレスしてできた皿を見た島村さんは、木の新しい可能性を感じていた。その後、運命の糸に引かれるように取材でエコアス馬路村を訪れる機会を得て、その時の提案によって木製バッグの製造が決まったのだ。
しかしいざ試作にかかると、すべてが困難を極めた。耐久性を上げるための工夫はもちろんだが、製縫、着色と難問が立ちはだかる。誰も木でバッグをつくったことなぞないのだから、無理もない。たとえば製縫ひとつとっても、バッグ表面材が何度も割れたり、ミシン針が折れるなど難航する。結局、パワーのあるミシンを独自開発することで解決したが、今でもミシン操作に慣れた一流のカバン職人でなければ針を折ってしまうそうだ。またバッグ表面の着色も容易ではない。自然素材にこだわった塗料と木材との相性が合わず着色できなかったり、ムラができてきれいに仕上がらなかったりと試行錯誤の連続だった。
そして4年の歳月を経て「MONACCA」(税込16,800円〜)は完成した。すべてのバッグの木目模様が異なる世界にひとつだけのオリジナルバッグ。薄くスライスした杉を何層にも重ね合わせているため、耐久性も申し分ない。また木は自然素材なので革製品のように使い込んでいけばいくほど味が出てくるという。ユーザーは愛着を感じずにはいられないだろう。「MONACCA」シリーズには3種類のバッグのほかにザブトン(4色)が販売されており、電卓、ローテーブル、椅子なども開発中とのことだ。
「MONACCA」は2006年のグッドデザイン賞を受賞、MoMA(米ニューヨーク近代美術館)のショップで販売され売れ行き好調とのことで、卓越した品質やデザイン性が世界でも高く評価されている証だろう。