「湖畔土佐」の代表者である谷清次郎さんは、独楽(コマ)遊びをこよなく愛している。満州から引き揚げてきた終戦当時、谷さんは8才だったが、ほとんどの子供が独楽遊びに夢中で、人より上手く回せることが一種のステータスだった。友人と独楽遊びをした楽しい記憶は今でも鮮明に残っており、いつかこの面白さを今の子供たちに伝えたいと思っていたと言う。
退職後ようやく子供たちに独楽遊びを教える時間ができたが、今の子供は教えても回せるようになると飽きてしまい、独楽はすぐにお蔵入りしてしまう。「テレビゲームやカードゲームに夢中で部屋にこもって外で遊ばない。だからコミュニケーション能力を養う機会が減ってきているし、与えられた遊び方しかできず、遊びを自分で探すことができない」と考えた谷さんは、一計を案じた。子供たちが飽きないように、独楽遊びに競技性を持たせたらどうか。そして思案の末に今の独楽競技(特許出願中)と競技用具を考案した。
直径30センチほどの丸いステージ(やぐら:最大6段まで積み上げる)の上で、相手より先に数個の独楽を同時に回す競技、垂直に立てられた輪っかの中に独楽を投げ入れ、その先に置かれた穴(小さいほど点数が高い)の中に入れば得点になる「独楽抜き」という競技もある。どの競技も独楽を回すことさえできればいいので簡単そうだが、意外に奥が深く、幼稚園児から高齢者まで幅広い年齢層の人が楽しむことができる。また個人戦もあれば団体で戦う競技もあり、集中力や忍耐力、チームワークなどを養うことができるという。すべての独楽遊びを楽しむには独楽用具セット(税込135,000円)を購入するとお得になっている。
この競技セットは、平成15年に「高知県発明くふうコンクール展」の高知市長賞を受賞。さらにNHKニュース番組「おはよう日本」でも独楽競技が取り上げられ、反響を呼んだ。この放送がきっかけで静岡県の小学校から独楽競技セットの注文があり、静岡県まで行って指導を行ったこともあるという。
高知県内では現在、4つの小学校で毎週指導を行っており、次第に生徒の関心も高まってきて各小学校にクラブも発足したそうだ。また平成8年には全日本独楽普及協会を設立、今後は高知県で県大会を開催する予定もあるという。「独楽競技をひとつのスポーツとして高知県に根付かせ、その楽しさを全国に発信したい」と、谷さんの鼻息は荒い。
ところで「湖畔土佐」という変わった屋号。谷さんが早明浦ダムの湖畔に生まれたことと、郵便切手にもなった明治画壇を代表する黒田精輝の名画『湖畔』が好きだったことから付けたという。湖に一石を投じたときにできる波紋のごとく、いつの日か谷さんの創り出したユニークな独楽競技も全国に広がって行くことだろう。