「他社がどうこうではなく、自分たちがいいと思ったものを商品化する」と語る専務の畦地(あぜち)履正さん。流行に便乗した商品は一切扱わず、地域の人たちがいいと思ったもののみを社員や住民の手で商品化する。扱う商品は地元産の米や野菜、お茶、ツガニ、鮎、山塩、卵などの四季を彩る食品のほか四万十ヒノキ(桧)を使った製品など。
中でもヒノキ(桧)を10pの正方形にスライスした板「四万十ひのき風呂」(1枚入200円)は好調で、販売開始から10年を経た今でも売れ続け、累計50万枚を超える大ヒット商品となっている。バスルームにこの板を1枚置くだけで、ほのかに桧の香りが漂い、その心地よさについ時を忘れてしまう。この商品は、客が希望するデザインの焼印を押すサービスがあるため、ノベルティ(販売促進用商品)としての注文もあるそうだ。ヒノキ関連商品はその他に足ふみ「四万十ひのきふみふみ」(2,000円)や、手足のコリをほぐすツボ押し棒「ゴリ押しつぼ押し棒」(400円)などがある。
畦地さんはもともと地元の農協に勤務していたが、生産者や顧客の顔を見ながら活動的に仕事がしたいとの想いから退職し、旧大正町、旧十和村、旧西土佐村の3つの四万十川中流域町村が出資して設立した第3セクター「四万十ドラマ」の創業期に入社。当初は2名だった社員数も現在では6名(臨時職員含む)に増員して積極的な新商品開発やきめ細かな販売を行っている。
ホームページでの商品紹介には生産者の顔や声を掲載し、商品にも生産者名を明記するなど、生産者の顔や個性を前面に出した販売手法はインパクトがある。おりしも食品業界では牛肉のBSE問題などでトレーサビリティ(商品の生産・流通履歴)の普及が叫ばれており、この分野ではいわばパイオニアともいえる。たとえば「ツボ押し」の類は今やどこにでも売っているが、四万十ドラマの商品にどこかしら温かみのようなものを感じるのは、客が生産者の顔を見ることにより、無意識のうちに生産者と親しい知り合いになったような親近感を持つからではないか。そのことが商品に温かみを生み出し、購買に結びついているのだろう。
畦地さんは「お米の品質も他には負けませんよ。ほかの商品もそう、何でもうちの商品が一番」と胸を張る。もともと地元に強い愛着と愛情を持った住民たちが一体となって地域代表の商品をつくるのだから、必然的に熱が入り、その結果競争力のある商品になっていくという一連の好循環ができているのだろう。四万十ドラマの存在はそういう意味で、地域が自力で生きていくためのひとつの見事な処方箋を示しているのだ。
これまですべてが成功したわけではないが、失敗は成功の布石につながるというプラス思考で今日までやって来たという畦地さん。「まだまだやるべきことは沢山ある」と目を輝かせる姿は印象的だ。