豊かな自然に恵まれた四万十市西土佐(旧幡多郡西土佐村)のはずれ、自然体験型宿泊施設「四万十楽舎」の一室に四万十ネイチャークラフト「杣人(そまびと)」がある。工房には工作機械のほか間伐材や雑木、端材などがところ狭しと置かれている。
工房の主は梨千春さん。「部屋の中に自然があるとホッとする、そんな安らぎをお客さんに提供したい」と語る。多くの人に木に対する興味をもってもらいたい、木工品づくりによって多くの人が地球環境を見直すきっかけになれば、との想いが梨さんにはある。
「四万十楽舎」は四万十川に面しており、自然を満喫するにはまさに絶好の場所。この好条件を生かして、木工品の製作や木工教室のほかにカヌー、シュノーケリング、魚釣り、イカダ、山登りといった自然と親しむ体験メニュー、また火振り漁やころばし漁、シャワークライミング(沢登り)など滅多に体験できない珍しいものまで揃っている。
何の変哲もないただの木が、梨さんの手にかかれば手品のように変身する。1つの丸太をくり抜いて作った椅子、枝をそのまま背もたれにした椅子、和紙と木材を組み合わせた照明器具(3,000円〜)など、どれも個性的な商品だ。こだわりは、未製材の木材のみで仕上げること。自然そのものが偉大なるデザイナーだと考え、自然に育まれた唯一無二の素材を最大限に生かすことを念頭において作業しているという。そのため、まず材料の色や形を見てから何をつくるかを決めるそうだ。
一番のヒット商品は振り子時計(3,000円〜)で、累計販売数はすでに2千個を超える。時計盤や振り子はもちろん木製だが、分針や時針までも木の枝や葉で製作する念の入れよう。とりわけ木の葉で作った針はおもしろい。購入時には緑色だったものが、次第に茶色に変化していくのだ。自然素材は経年変化がひとつの魅力だが、これほど明瞭に見えるものも珍しい。
かつて都会の広告代理店でデザイナーをしていた梨さんは、大量生産・大量消費の社会に疑問を感じたことから退職し、生まれ故郷の「四万十楽舎」と関わるようになった。そして、もともと自分でデザインを考えたり物をつくることが好きだったこともあり平成12年から木工に携わるようになった。地元に材料となる木が豊富にあるからだが、それだけではなく子供の頃と比べて山が荒れ、世のほとんどの商品が石油でつくられている現状に風穴を空けたかったという。
「木との一期一会の出会いを大切にしていきたい」と語る梨さん。現在の顧客は年配の女性が多いそうだが、今後は若い人もターゲットにしていきたいという。ひと目見ると芸術作品とも感じられる商品たちに出会うと、誰もが何かを感じずにはいられないはずだ。