| テーマ: 『やさしい森林GIS』 |
時々新聞で目にするGISとは地理情報システム(Geographic Information System)の頭文字を並べたものです。これは、災害に備えて危険な場所を市民に伝えるためや、上下水道や道路を計画管理するために、コンピュータに地図として記号や図形を描き、その印には何があるかを記録したものです。
役所では担当部署毎に地図が作られて利用されてきたのですが、役場や県庁で部署を超えて共同して利用する地図の仕組みも取り入れられつつあります。この仕組みの一部は防災マップとして市民に公開されつつあり、インターネットを通じてこの仕組みを利用することができます。また、一般の人が情報を提供することで多くの人がその事実を共有することもできるようにした仕組みもあります。
地図は点と線で描かれていますが、線で囲まれた範囲は広がりをもった面としての多角形をしています。点には記号も含まれていて象徴的にその場所を代表して記されています。三角点は点そのものですが、学校や役所なども敷地全体を描かないで点で代表されています。線には道路や線路、そして市町村の境界などを描くために使われます。これも道路には幅があるのですが線で代表して描かれることがあります。面には市町村の範囲全体であったり、省略しないで敷地を記すために囲ったものがあります。それぞれの図形には属性といってその名前や特徴があります。GISは図形と属性を関連付けて図形から属性が、属性からその場所が相互に導き出されるようにした仕組みです。
GISは森林管理にも活用されています。森林は人が管理しているかどうかに関わらず自然の条件に基づいて成り立っています。その条件とは斜面の傾斜、南向きや北向きといった斜面の方位、尾根や谷といった斜面の形、こういった地形が自然条件の一つです。第2に、ずっと広範囲の地形そして地球全体の空気の状態と変化に左右される気温、湿度、降水量といった気象があります。そしてこれらの自然条件がとてつもなく長い年を経て、変化してきた結果として地表近くの岩や土の今の性質が決まっています。これらを地質や土質といいます。地表表面の植物が根を張る土の層の性質には今までの植物の繁茂の歴史も関わっています。これらは土壌といい、化学的性質と物理的性質があいまって水はけの良し悪しやその土地に適した植物の種類が異なっています。これらは植生といいます。こういった自然の条件を知ることは森林を管理するためには大変重要です。森林を知るための基礎としてのこれらの情報は森林簿として帳簿に記録されてきました。場所についての情報ですので場所も記録していかなければなりません。そこで、地図と合わせて管理されています。
▲国土地理院作成国土数値情報土地利用データ100mメッシュを利用した高知県の森林率図です。緑が濃いところほど森林率が高くなっています.
森林管理のための地図には様々なものがあります。自然条件以外のものとして所有者の境界を記した地籍調査図、樹木の種類と樹齢に応じて管理の単位としてまとめた森林計画図があります。森林組合、市町村の役場、県庁の森林局などで活用されており森林の手入れのために欠かせないものです。
森林には植物だけでなく、動物も生活しています。そこで、環境省は自然情報として植物だけでなく動物の生息分布についても調査をして様々な地図を公開しています。ところがこの調査は大変労力がいるもので、多くの人々からの情報が欠かせません。都市の中にも動物が生活しています。これらも含めて人が見つけることができる動植物の分布を明らかにしていくことは「そういえばおらんようになったなあ」といった印象だけでなく、その変化を克明に知ることとなり、その対処も可能になるのです。

▲いの町内の旧伊野町にある寺社におけるムササビの生息調査の結果です。国土地理院作成国土数値情報50m標高データから作成した等高線データを利用しています.
ここにもGISは活用されています。そうです、GISは役所で管理するためだけの道具ではないのです。地図を見て今いるところは地図のどこかということがすぐにわかる人には登山にもっていくような等高線が描かれた地形図で十分かもしれませんが、道に迷う人がいるように誰でもそう簡単にはいきません。そこで、空から撮影した写真を地形図の代わりに使う方法もあります。その写真には衛星から撮影したものや飛行機から撮影したものがあります。きっと地図帳で見たことがあるはずです。そう、テレビの天気予報にも使われています。衛星からの画像も詳細なものが使われるようになりましたが、家の裏山周辺の写真となるとなかなか見ることはできません。県によってはその県の全域を25cmの細かさで写真として一般に公開しているところもあります。これらは飛行機から撮影した写真を加工して重ね合わせたものです。この写真をデジタルオルソ写真といい、災害時の被害の状況をすばやく知るためにも活用されています。地図が苦手な人もこのような写真なら今どこにいるかが少しはわかりやすくなるかもしれません。

▲2000年高知県撮影の中山間空中写真をオルソ化し、国土地理院作成国土数値情報50m標高データから作成した
GISは地図やあらかじめ調査された情報を基にして様々な人がそれぞれの目的に応じてどんどんと情報を書き足していき、現場の様子を再現し、これからの計画に役立てるものです。どこかで間伐が遅れている場所があればそれを記し、間伐が実行されればそのことを記し、どこかで何かの動物を見つけたら発見場所と動物の様子を記し、斜面が崩れていればその場所を記し、なぜ崩れたのかを自然条件の情報と現地調査から解明し、その対策を考えるといったように使うこととなります。山が崩れることについても理由は単純ではありません。ここ10数年の間に森林の管理が遅れたからといったことだけではなく、その場所がそのずっと前から今までにどのように利用されてきたのか、その場所はどのような自然条件をもっているのかによってそれぞれの理由が異なっています。話は単純なほうがわかりやすいかもしれませんが、その対策は単純ではありません。
さあ、地図や写真をもって森林に行き、あなたならではの情報を集めてみてください。どうしてもその場所がわからなければ、GPSという道具もあります。カーナビ用だけでなく登山用の携帯受信機、ポケナビという商品名で売られているものもあり、携帯電話程度の大きさのもので、自分の位置を知ることができます。その位置を地図におとすには地図の緯度経度についての知識が必要です。パソコンを使い慣れている人はインターネットからダウンロードできる簡易なGISソフトと国土地理院発行の標高データのCDを使えばパソコンを使ってパソコン画面の地図にマークとして記録することもできます。もっとも、専門家にその情報を伝えるのであればその値を位置の情報として付け加えれば十分です。もっともこのような情報を受け取る窓口が皆さんの身近にはなかなか見当たらないのですがこの話しをきっかけに高知の自然と人のための窓口づくりと情報提供の仕組みをつくっていきませんか。
もっと詳しいことを知りたい人のために
連絡先 gotou@fs.kochi-u.ac.jp
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