山のしごと
しごと紹介 森林組合 緑の雇用 間伐

テーマ:不在村森林所有者への間伐推進
 
代表報告者:中央林業事務所 AG 塩見 隆司

1.まえがき
 不在村森林所有者の問題は、林業白書でも「不在村者の森林施業の実施割合は、在村者より低水準にある。平成12年に私有林面積の25%まで増加した不在村者保有森林面積と、林業後継者の不在は森林施業の実施割合を低下させることが懸念される」と林業経営をめぐる動向と課題のなかで触れられています。また、過去の世界農林業センサスのデータを見ても不在村森林所有者は年々増加しており、森林の放置など森林荒廃の大きな原因となるケースが目立ってきています。

 物部村は、不在村地主が民有林人工林面積の6割を占めており、不在村地主の協力なくしては間伐の推進はいうまでもなく、効率的な森林整備を目指す団地設定やその運営は不可能な現状にあります。つまり、森林施業共同化のための話し合いや、間伐説明会を開催しても遠路はるばる物部村までやって来て、話を聞いてくれる不在村地主はいないのです。

 そこで、現地視察を企画し、物部村の山林の中に立ち入り、その状況を実際に見て、聞いて、体感していただくことにしました。


2.活動について
(1)取り組みのきっかけ

 物部村の間伐推進員は、平成12年より高知物部流域の間伐を推進するため、林構事業で設置されており、間伐推進員、市町村、森林組合等が連携を取りながら間伐の推進にとりくんでいますが、平成14年度に、間伐推進員の集まりの中で、不在村地主対策について何か出来ないだろうかとお話がありました。

 間伐推進員が森林を巡視し、森林の状況を把握して、現地検討したうえ、森林所有者にその状況を説明し、間伐等施業実施の働きかけを行っています。働きかけを行っていく中で、所有者の意向調査を行おうにも所有者が不在村の場合は、間伐への関心が低く説得が難しいようです。それは、間伐推進員が森林の状況を不在村所有者に説明しても、なぜ間伐が必要なのか、また、その仕方など電話だけではなかなか伝わらないといった問題があったからです。


(2)何をしたのか

 そこで、この問題を解消するには、物部村・物部森林組合と一緒になって、不在村森林所有者に、間伐していない山と、間伐の進んだ山を実際に見てもらうことが一番説得力があるのではと考えました。

 現地は、物部森林組合が平成11年度から「施業モデル団地整備事業」を利用して団地化を推進した庄谷相を選びました。庄谷相団地は、森林面積572ha(スギ231ha、ヒノキ269ha)路網密度は、物部村全体が18.9m/haなのに、団地内は35m/haと倍近くあり、森林組合が、団地内で間伐を中心に施業を実施しています。

 今回の現地視察の対象者は、森林簿を調べると、不在村の8割は香美郡・南国市・高知市の物部近隣の市町村に在住しているので、一定の面積を所有する人で高知市近郊に在住する方としました。物部村役場が、平成12年度にゾーニングの説明会を開催するために、3ha以上の森林を所有する人の名簿(約700人)を整理しており、それを利用して間伐希望者を除外し、新たに不在村森林所有者名簿を作成し、案内を送付するとともに森林組合は、電話で個別に勧誘を行いました。日程は、気候のよさそうな9月下旬の日曜日ということで9月28日と決めました。

(3)現地にて

 当日は、高知市16名、南国市7名、土佐山田町19名、合計42名の森林所有者とその家族が参加しました。往路では、事務所から今回の取り組み、間伐推進等について説明を行いました。

 物部に到着すると、大栃の奥物部ふれあいプラザでバスから、役場・森林組合の1ボックス等に乗り換えてもらい庄谷相団地へ向かいました。

現地にて その1 まず、団地内でヒノキ25年生の間伐未実施林分を見てもらいました。この現地は、除伐を一度行ったようですが、その後放置されており、林内は暗く、自然枯死木が目立ち、下草も生えず、土が剥き出しとなっています。典型的な間伐未実施林分で、荒廃林としてパンフレットに使用できそうな森林です。「真っ暗だね」「うちの山もこうなのかな」といった声が聞こえました。このような森林では、水源かん養機能や土砂の流出を防止する機能が低下することを実感していただけたと思います。
 
現地にて その2  次に、間伐団地内で平成12年度に搬出間伐を行った現地を見てもらいました。この森林は、スギ、ヒノキ40年生程度で,本数間伐率40〜60%程度の強度間伐を実施しています。事業実施から3年程度が経過しており、林内は明るく、下草やかん木が生い茂り、健全な森林の姿となっており、森林の保水機能や土砂の流出を防止する機能についても実感していただけたと思います。「さっきとぜんぜん違うね」「こんなふうにせないかんね」と言っていただけました。

お弁当 その後、間伐実施地のそばで、地元の庄谷相地区の人達に作っていただいた弁当で昼食をとりました。
 昼食の後、団地内の間伐実施地を見ながら、奥物部ふれあいプラザに戻り、午後から間伐相談会を開催しました。


(4)会場では

 まず、全体説明を行い、その後参加者一人一人に持ち山の状況を航空写真や図面を示して、間伐について話を進めました。中には自分の山の境界がわからない人もいましたが、最終的に所有者全員の方から間伐の同意をいただけました。

 参加者からは、「10年前に間伐したが、今回組合に頼んでもう一度間伐をしたい」「自分で間伐をしたいので、補助の手続きをお願いしたい」「作業路を開設したいが、補助事業はないか」「共有林になっているので、共有者と相談の後、管理委託をお願いしたい」等いろいろな相談がありました。

 間伐相談会終了後、高知に戻りました。帰りのバスの中で、年配の女性の方が、「友達も出来たし、山に興味を持つことが出来た。今日は、楽しかった」と言っていただいたことが印象に残りました。その方も山の手入れは終わったつもりだが、再度山守りの方と連絡をとって確認をしてみたいと言われていました。
会場では その1
会場では その2


(5)取り組みを終えて

 参加者には好評でしたが、昼食・バス(交通手段)を準備しても、思ったほど参加者が集まらず、費用と手間がかかりました。とくに、間伐団地内にバスが入らないので、車の乗換えが必要となりたくさんの人手が必要でした。また、秋は産業祭等イベントが多く、役場・森林組合にご迷惑をおかけしました。さらに、参加者の勧誘中には、「関係のない人の山には行きたくない」「自分の山に連れて行ってもらえるなら行きたい」等実現の難しい要望もあり、どこまで反映していくのかが問題となりました。

 今回の取り組みの中で一番の収穫は、現地で間伐未実施林分と間伐林分を自分の目で見て、話を聞いて、体感していただいたことは、写真やパンフレットなどで間伐の必要性を説明するよりも、受け止め方がぜんぜん違うということがはっきりしたことです。日々山を見ていない方は、山に関心が少なく、不在村者と村内在住者の施業の差は、身近に山があって、普段から山が気になることも一つの要因かもしれません。現場を見せてあげることが大切だと感じました。物部から出て行った人達とふるさとの交流をはかり、広がりを持たしていくためにも、このような取り組みを継続的に行っていく必要があります。

 今回は、高知市の不在村所有者を中心に、その家族に参加していただきましたが、この方たちは、比較的所有面積の大きな人たちでした。今後は、小規模所有者の人たちにも声を掛けていきたいと思っています。そのために、不在村所有者名簿を作成し、個人ごとの所有森林を図面に落とし、航空写真等で確認し、出来れば、森林ごとの林内写真も撮影できたらと思っています。これらのデータをもとに、高知市などで不在所有者の皆様に集まっていただき、個人ごとのデータを示し、間伐の話をした後に、現地視察を計画し、最終的に自分の目で見て間伐に理解をいただくようにしていきたいと思います。

 当日は、物部村役場、物部森林組合の熱心な取り組みで、無事終了することが出来ました。森林所有者の方々に、「森林組合はこういう事業をやっているんだということを見てほしい」「森林(山に)に夢をもって見てほしい」という森林組合の熱い思いや、それを支援する役場の協力が、伝わったことと思います。